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令和4事務年度(令和4年7月~同5年6月)所得税の調査実績【税務レポート】

令和4事務年度(令和4年7月~同5年6月)所得税の調査実績

解説:日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

国税庁は昨年11月、令和4事務年度(令和4年7月~同5年6月)の所得税及び消費税の調査等の状況を公表しました。所得税の調査等の件数、申告漏れ所得金額と追徴税額の合計はいずれも前事務年度より増加し、富裕層や海外投資等を行っている個人の申告漏れ所得金額は過去最高となりました。

Ⅰ 調査等の状況

1. 所得税の調査等の状況
実地調査の件数、非違件数、申告漏れ所得金額の総額及び追徴税額の総額は増加し、1件当たりの申告漏れ所得金額及び追徴税額についても高水準です。前事務年度及びコロナ禍前の対平成30事務年度と比べても増加しています。
文書等による接触方法を積極的に組み合わせることにより、簡易な接触による調査等件数、非違件数、申告漏れ所得金額及び追徴税額は、1件当たりも含め、全て増加しています。

2. 消費税の調査等の実績
消費税でも所得税と同様の傾向が見られます。社会活動や経済活動はコロナ禍以前に復帰しつつあり、税務調査についても同様です。

Ⅱ トピックス(主な取組)として以下の取り組みが挙げられています

1. 富裕層に対する調査状況
有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人など、「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に積極的に調査を実施しています。結果、申告漏れ所得金額の総額は980億円で過去最高となりました。

2. 海外投資等を行っている個人に対する調査状況
経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報などを効果的に活用し、積極的に調査を実施しています。
申告漏れ所得金額は総額及び1件当たり申告漏れ所得金額が過去最高となっています。

3. インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています。
暗号資産を含め、調査件数や追徴税額は高水準となっています。

4. 無申告に対する調査状況
無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなります。無申告者に対しては、更なる資料情報の収集及び活用を図るなどして、実地調査のみならず、簡易な接触も活用し積極的に調査を実施しています。 所得税は追徴税額の総額、が過去最高になっています。
消費税無申告者に対しては7,615件の実地調査を行い、追徴税額は198億円と増加し、1件当たりの追徴税額は260万円と過去最高を更新しました。

5. 消費税の還付申告者への調査状況
消費税の不正還付等に対して牽制・抑止を行う観点から、令和4事務年度分から初めて消費税の還付申告者への調査状況が公表されました。
消費税の還付申告は、申告書の添付書類や保有する資料情報等に基づき厳格な審査を行い、申告内容に疑義がある場合には、還付を保留し、実地調査等を行うなどして還付原因等の解明・確認を実施しています。
令和4事務年度においては、1,122 件(前事務年度 620 件)の実地調査を実施し、 追徴税額の総額は 14 億円に上ります。

Ⅲ 最後に

所得税の調査等の合計は63.7万件、消費税は9.3万件です。調査全体では所得税の件数が消費税の件数を圧倒しています。けれど、「無申告者」の件数では、所得税 < 消費税と逆転しています。そして、2023年(令和5年)10月から消費税インボイス制度が始まりました。
インボイス対応により免税事業者から課税事業者となるケースの消費税の申告・納税については、税務調査においての注目項目になることが予想されます。
また、下記の参考計表の個人の事業所得者の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種では、令和元事務年度までは、風俗業とキャバクラが常に1位2位を争っていたのですが、令和2事務年度からは新しいビジネスモデルが進出しています。国税庁が特に調査を強化している分野の周知という側面から公表されているとも考えられますが、国税庁のサイトで公表されている資料ですので、興味のある方はご覧になってください。

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2024年01月29日

日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 座間 昭男

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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